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相続土地国庫帰属制度とは?要件・費用・申請の流れを2026年最新版で解説!

親から相続した土地、もう使い道がなくて困ってる…。国に返せる制度ができたって聞いたけど、自分でも使えるのかな?

相続土地国庫帰属制度とは、相続で得た土地を、国に引き取ってもらえる制度です。2023年4月にスタートした比較的新しい仕組みで、活用予定がなく管理が負担になる土地を手放したい人が利用できます。

この記事で分かること

  • 制度の基本と最新の運用状況
  • 申請できる人と対象になる土地
  • 却下や不承認になる土地の具体例
  • 審査手数料と負担金の目安
  • 申請の流れと必要書類
  • 相続放棄との違いと使い分け

読み終える頃には「自分のケースで使えるか」「次に何をすべきか」が判断できる状態になります。それでは早速、制度の中身を順番に見ていきましょう。

目次

相続土地国庫帰属制度とは?

相続土地国庫帰属制度は、相続で取得した土地のうち、活用予定がなく管理が負担となるものを、国に引き取ってもらえる制度です。背景には、相続をきっかけに増え続ける「所有者不明土地」を減らしたい国の方針があります。

所管は法務省で、実際の窓口は全国の法務局・地方法務局の本局です。支局や出張所では受け付けていない点だけ覚えておきましょう。

2023年4月施行の制度

本制度は2023年4月27日に施行された制度です。それまで、相続した土地を国へ個別に返す公的な仕組みは存在しませんでした。不要な土地を抱えた相続人にとっては、長年の懸案がようやく動き出した形です。

根拠法は「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」。長い名称なので、本記事では「国庫帰属制度」と略すこともあります。

2026年最新の運用状況

法務省が公表している運用統計によると、2026年3月31日時点で申請5,252件、国庫帰属が認められた件数は2,605件に達しています。施行から3年でおおむね半数近くが承認されている計算です。

区分件数備考
申請件数5,252件田畑が最多で2,042件
帰属件数2,605件宅地948件、農用地849件
却下件数80件添付書類未提出が最多
不承認件数81件整備が必要な森林が多い
取下げ件数980件事前判断で見送るケース
出典:法務省「相続土地国庫帰属制度の統計」

注目したいのは取下げ件数の980件です。事前審査や法務局との相談の中で「これは難しそうだ」と判断され、申請を見送るケースが少なくありません。申請前の事前相談がいかに重要かが分かる数字です。

却下や不承認は実は少なめ。ただ、申請前に諦める人も多いから、最初の事前相談で見極めるのが大事だね。

相続土地国庫帰属制度を申請できる人

本制度を利用できるのは、相続または遺贈で土地を取得した個人に限られます。法人や、相続以外の方法で土地を取得した人は申請できません。

申請できる人

  • 相続で土地を取得した個人
  • 相続人への遺贈で土地を取得した個人
  • 共有名義の土地を相続人全員で共同申請する場合
  • 2023年4月以前に相続した土地

申請できない人

  • 売買や交換で取得した土地
  • 生前贈与で取得した土地
  • 相続人以外への遺贈で取得した土地
  • 法人が所有している土地

とくに注意したいのは生前贈与です。相続前に贈与で名義を変えてしまうと、本制度の対象から外れます。生前贈与を検討中の人は、本制度の利用も視野に入れたうえで判断のタイミングを考えましょう。

相続土地国庫帰属制度を申請しても却下される5つの土地

制度には「申請段階で受け付けてもらえない却下要件」と「審査後に承認されない不承認要件」の2段階があります。まずは却下される5つの土地を確認しましょう。

却下される5つの土地

  1. 建物が建っている土地
  2. 担保権や使用収益権が設定されている土地
  3. 他人の利用が予定されている土地
  4. 土壌汚染がある土地
  5. 境界が不明、または所有権に争いがある土地

それぞれ順番に解説していきます。

①建物が建っている土地

家屋・倉庫・物置などの建物がある土地は、そのままでは申請できません。国が土地を引き取ったあと、建物の維持管理に膨大なコストがかかるためです。

もし建物付きの土地で申請を考えるなら、事前に解体し更地にする必要があります。ただし解体費用は木造の戸建てでも100万円台後半、鉄骨造になると300万円以上かかることもあります。立地によっては解体後の固定資産税が大幅に上がる可能性もあるため、費用対効果は慎重に検討しましょう。

解体前に考えたいこと

  • 解体費用は本制度の対象外、自己負担になる
  • 解体後は住宅用地特例が外れ固定資産税が増える可能性
  • 更地にしても他の却下要件に該当すれば申請できない

②担保権や使用収益権が設定されている土地

抵当権や賃借権などの権利が登記簿に残っている土地は、そのままでは申請できません。これらの権利が残ったままだと、国が完全な所有権を取得できないためです。

担保権が残っているケースでよくあるのが、被相続人が組んだ住宅ローンの抵当権がそのまま登記簿に残っているパターンです。ローンを完済していても、抹消登記をしていなければ申請は通りません。事前に登記事項証明書を取得し、不要な権利が残っていないかを必ず確認しましょう。

賃借権が設定された土地も、まずは借主との間で契約解除の合意を取り付け、登記を抹消する必要があります。借主との交渉に時間がかかるケースもあるため、早めの着手が肝心です。

③他人の利用が予定されている土地

通路や墓地、水道用地、ため池など、他人が日常的に使う土地は対象外です。国に引き取ってもらった後も第三者との調整が継続的に発生するためです。

とくに多いのが、近隣住民が日常的に私道として使っている土地です。法務省の統計でも、却下理由の上位に「現に通路の用に供されている土地」が並んでいます。長年にわたり近隣が通り抜けに使っているような土地は、地目が宅地でも「通路扱い」と判断されることがあります。

判断が難しいケースが多いので、私道や農道、共同墓地など他人の利用が想定される土地は、事前相談で確認しておくと安心です。

④土壌汚染がある土地

土壌汚染対策法の特定有害物質に汚染されている土地は申請できません。国が引き取った後、汚染除去に巨額の費用がかかるためです。

工場跡地、ガソリンスタンド跡地、クリーニング店跡地などを相続した場合は注意が必要です。表面上はただの空き地に見えても、地中の汚染が判明すれば却下されます。心配な場合は、土壌汚染状況調査を専門業者に依頼して結果を確認したうえで申請を検討しましょう。

調査費用は土地の面積や状況にもよりますが、数十万円から100万円規模になることもあります。費用対効果を踏まえ、専門家と相談しながら進めるのが現実的です。

⑤境界が不明、または所有権に争いがある土地

隣地との境界が曖昧、所有権をめぐる争いがある土地も却下対象です。法務省の統計でも、却下理由の上位に「境界が明らかでない土地」が挙がっています。

境界が曖昧な土地は、山林や農地、長年放置された相続土地で特によく見られます。境界を確定させるには土地家屋調査士に測量を依頼し、隣地所有者全員の立ち会いと同意を得る必要があります。費用は数十万円規模、期間は数か月かかることが一般的です。

境界確定で詰まりやすいポイント

  • 隣地所有者の所在が分からない
  • 隣地所有者が立ち会いに応じない
  • 古い境界標が失われている
  • 過去の測量図が存在しない

相続土地国庫帰属制度を申請しても不承認になる5つの土地

却下要件をクリアして申請を受け付けてもらえても、書面審査と実地調査の段階で「不承認」となる類型があります。最後の関門になる5つの土地を確認しましょう。

不承認になる5つの土地

  1. 一定の勾配や高さがある崖を含む土地
  2. 通常の管理や処分を妨げる工作物がある土地
  3. 除去しなければ管理できない地下埋設物がある土地
  4. 隣地などとの争訟が必要な土地
  5. 通常の管理に過分な費用や労力を要する土地

それぞれ順番に解説していきます。

①一定の勾配や高さがある崖を含む土地

勾配30度以上かつ高さ5メートル以上の崖を含む土地は不承認となります。崩落リスクがある土地は、国が引き取った後の管理コストが大きすぎるためです。

山間部や傾斜地の土地では該当しやすい類型です。とくに、過去に土砂崩れが起きたエリアや、急傾斜地崩壊危険区域に指定されている土地は要注意です。崖の有無だけでなく、崖の高さと勾配の両方が判断基準になります。

申請前に現地を確認し、崖の有無が気になる場合は事前相談で写真を見せながら相談すると判断の目安が得られます。地形が分かる図面や航空写真を持参すると話が早く進みます。

②通常の管理や処分を妨げる工作物がある土地

放置車両や産業廃棄物など、撤去が必要な工作物がある土地は対象外です。法務省の統計でも、不承認理由のなかで「管理を阻害する工作物が地上に存する土地」は最多に近い水準にあります。

放置されたままの自動車、撤去されていない物置やビニールハウス、産業廃棄物の不法投棄が残っているケースなどが典型です。建物として登記されていなくても、撤去に費用がかかる構築物は不承認の対象になります。

申請前に現地を確認し、不要な工作物は撤去しておく必要があります。撤去費用は土地の所有者負担となるため、撤去後に申請するかどうかは費用対効果を踏まえて判断しましょう。

③除去しなければ管理できない地下埋設物がある土地

地下に基礎や浄化槽、廃棄物が残っている土地も不承認です。地上は何もないように見えても、過去に建物があった土地では地下に基礎が残っているケースが少なくありません。

過去にガソリンスタンドや工場、農薬倉庫があった土地では、地下タンクや汚染物質が残っている可能性もあります。見た目では判断しづらいため、不安がある土地は地歴調査を専門業者に依頼すると安心です。

過去の土地利用履歴は、市町村の都市計画課や図書館で古い住宅地図を確認すると分かることがあります。事前に調査しておくと、申請前に手を打てる可能性が広がります。

④隣地などとの争訟が必要な土地

隣地との訴訟が想定される土地は認められません。国が引き取った後にトラブルに巻き込まれることを防ぐためです。

長年続く近隣トラブルがある土地、過去に境界紛争で調停や訴訟が起きた土地、隣地から越境した木の伐採で揉めている土地などが該当します。表面上は静かでも、隣地所有者との関係がこじれているケースは要注意です。

事前に隣地所有者と話し合い、争いの種を解消しておくと申請がスムーズです。話し合いが難航する場合は、弁護士に間に入ってもらうことも検討しましょう。

⑤通常の管理に過分な費用や労力を要する土地

災害危険区域や鳥獣保護区など、管理に通常以上の負担がかかる土地が該当します。整備が必要な森林も、国による追加整備を要する場合は不承認となります。

山林を相続したケースでは、この類型に該当する可能性が高いです。法務省の統計でも「国による追加の整備が必要な森林」は不承認理由の上位を占めています。間伐や下草刈りが長期間行われていない山林は、引き取りのハードルが高くなる傾向にあります。

山林の場合は、地元の森林組合に管理状況の評価を依頼しておくと、申請可能性を見極めやすくなります。森林経営計画が立てられている山林は、不承認になりにくい傾向もあります。

相続土地国庫帰属制度にかかる費用

本制度を利用するには、申請時の審査手数料と、承認後に納める負担金の2種類の費用がかかります。

審査手数料は土地1筆あたり14,000円

土地1筆につき14,000円が必要です。収入印紙で納付します。注意したいのは、申請が却下・不承認になった場合や、自ら取り下げた場合でも返還されない点です。

「とりあえず申請してみよう」と気軽に出すと、手数料が無駄になる可能性があります。必ず事前相談で見込みを確認してから申請に進みましょう。

負担金は10年分の管理費相当額

承認を受けると、土地の種別・面積に応じた負担金を納めます。負担金は、国がその土地を10年間管理するのに必要な標準的費用に相当する金額として算定されます。

納付期限は承認通知から30日以内です。期限内に納付が確認された時点で、土地は国庫に帰属します。納付しないと承認自体が失効するため、資金準備は事前に進めておきましょう。

土地種別原則の負担金面積按分される条件
宅地20万円市街化区域や用途地域内
田・畑20万円市街化区域や農用地区域内
森林面積で算定すべての森林が対象
その他20万円区域による加算なし
出典:法務省「相続土地国庫帰属制度の負担金」

市街化区域内の宅地や、面積の大きい森林は原則額の20万円を大きく超える可能性があります。市街地の宅地では数十万円から100万円以上になる事例もあります。隣接する同種の土地を2筆以上一括で申請すると、合算面積で算定される特例があり、結果として負担金が抑えられることがあります。

相続土地国庫帰属制度の申請5ステップの流れ

申請から国庫帰属の完了までの流れを5つのステップで整理します。事前相談から完了まで、トータルでおおむね1年程度を見込んでおきましょう。

STEP
法務局の本局へ事前相談

土地所在地を管轄する法務局・地方法務局の本局へ事前相談を申し込みます。対面相談に加え、2024年10月からはウェブ相談も利用可能です。土地の概要を伝え、申請の見込みや必要書類のアドバイスをもらいます。事前相談は無料です。

STEP
承認申請書と添付書類を準備

法務省様式の承認申請書を作成し、土地の位置図・形状図・境界点の写真・相続関係を示す戸籍謄本などを揃えます。書類の不備は却下の最大要因。事前相談で指摘された点を反映させて整えましょう。

STEP
管轄法務局の本局へ申請書を提出

申請書類一式に審査手数料分の収入印紙を貼付して提出します。郵送提出も可能ですが、初回は窓口で内容確認を受けると安心です。提出後は法務局からの連絡を待ちます。

STEP
法務局による書面審査と実地調査

法務局担当者が書面審査を行い、必要に応じて職員が現地を訪れ実地調査を実施します。境界や建物の状況、地下埋設物の有無などが確認されます。追加資料の提出を求められることもあります。標準的なケースでは半年から1年程度かかります。

STEP
負担金の納付と国庫帰属の完了

承認通知とともに負担金の額が通知されます。通知から30日以内に納付すると、その時点で土地の所有権が国庫に帰属します。以後の管理は国が担います。納付しないと承認が失効する点に注意しましょう。

相続土地国庫帰属制度の申請に必要な書類

提出書類は法務省が様式を公開しており、原則として申請者が自分で準備します。主な書類を整理します。

申請に必要な主な書類

  • 法務省所定の承認申請書
  • 土地の位置や形状を示す図面
  • 境界点の写真
  • 相続関係を証明する戸籍謄本など
  • 共有名義の場合は共有者全員の同意書

それぞれ順番に解説していきます。

法務省所定の承認申請書

法務省の公式サイトから無料で入手できます。土地の所在・地番・地目・面積などを記載するため、登記事項証明書を手元に揃えてから記入を始めるとスムーズです。

土地の位置や形状を示す図面と境界点の写真

地図、図面、境界点の写真をセットで提出します。境界点の写真は、隣地との境を判別できる角度・距離で撮影する必要があり、現地確認の負担が大きい部分です。

相続関係を証明する戸籍謄本など

申請者が相続または遺贈で土地を取得したことを示すため、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、申請者の戸籍謄本、相続関係説明図などを提出します。戸籍は転籍や改製により複数の自治体にまたがることが多いため、取り寄せには時間がかかります。

共有の場合に追加で必要になる書類

共有名義の土地は、共有者全員の同意を示す書類が必要です。共有者の戸籍謄本・住民票も追加で求められます。一人でも反対者がいると申請できません。共有者と疎遠になっている場合は、連絡の取り付けから始める必要があります。

相続土地国庫帰属制度のメリット

制度を利用するメリットを整理します。不要な土地を整理したい人にとって、選択肢の幅が大きく広がる制度です。

本制度の4つのメリット

  1. 相続放棄せず特定の土地だけ手放せる
  2. 2023年4月以前に相続した土地も対象
  3. 公的制度ゆえの透明性と安心感
  4. 将来の管理コストと固定資産税から解放される

それぞれ順番に解説していきます。

①相続放棄せず特定の土地だけ手放せる

相続放棄では、預貯金や自宅などほかの財産もまとめて手放すことになります。一方で本制度なら、不要な土地だけをピンポイントで手放せます

たとえば、都市部のマンションと地方の山林を相続したケースを考えてみましょう。相続放棄を選ぶとマンションも手放すことになりますが、本制度なら山林だけを切り離して国に引き取ってもらえます。価値のある財産は受け継ぎつつ、負担となる土地だけ整理したい人に最適な仕組みです。

②2023年4月以前に相続した土地も対象

制度施行前に相続した土地もさかのぼって対象になる点が本制度のもう一つの大きな特徴です。何十年も前に親や祖父母から引き継いだ土地でも、要件を満たせば申請できます。

とくに「相続したまま放置していた山林」「数十年前から手つかずの遠方宅地」などを抱えている人にとって、本制度は救済策となります。施行日が古い相続にも適用される制度は珍しく、過去の相続を整理し直すきっかけにもなります。

③公的制度ゆえの透明性と安心感

法律に基づき法務局が窓口となるため、手続きや費用が公開・標準化されています。価格交渉や条件のすり合わせも不要で、決まったルールに沿って粛々と進められます。

不要な土地の処分というと、怪しい買取業者に二束三文で手放してしまったり、契約トラブルに巻き込まれたりするリスクが付きまといます。本制度はそうしたリスクが小さく、相続人にとって精神的な負担も軽減できます。

④将来の管理コストと固定資産税から解放される

国庫帰属が認められれば、以後の固定資産税の納付義務や、維持コストから解放されます。草刈り・境界管理など、毎年の手間からも解放されるのが大きな魅力です。

負担金は10年分の管理費相当ですが、それ以降も保有し続けるよりは長期的に有利になるケースが多いです。とくに、子や孫世代への負担を残したくない人にとって、世代をまたいだ問題の早期解決につながります。

相続土地国庫帰属制度のデメリット

一方で、本制度には無視できないデメリットもあります。利用前に必ず押さえておきましょう。

本制度の4つのデメリット

  1. 審査手数料と負担金が必ずかかる
  2. 対象外となる要件が厳しく承認のハードルが高い
  3. 申請が却下・不承認になるリスクがある
  4. 申請準備から決定まで時間がかかる

それぞれ順番に解説していきます。

①審査手数料と負担金が必ずかかる

申請するだけで14,000円、承認されれば最低でも20万円程度の負担金が発生します。本制度は、土地を「タダで返せる」制度ではありません。

場合によっては、解体費用、境界確定の測量費、専門家への報酬を含めると総額100万円を超えることもあります。負担金が想定より高くなる土地もあるため、申請前に総コストを試算したうえで判断しましょう。

②対象外となる要件が厳しく承認のハードルが高い

却下5類型と不承認5類型をすべてクリアする必要があります。とくに境界の確定や建物解体は大きな関門で、事前準備に費用と時間がかかります。

山林や郊外の宅地など、境界が曖昧な土地ではハードルが高くなりがちです。実際、法務省の統計でも取下げ件数が980件と多く、申請前の段階で諦めるケースが少なくありません。事前相談で見込みを確認することが、無駄な労力を避けるうえで重要です。

③申請が却下・不承認になるリスクがある

却下・不承認でも手数料は返らない点に注意が必要です。事前相談で見込みを確認せずに申請すると、費用と労力が無駄になる可能性があります。

とくに「自分の土地は大丈夫だろう」と過信せず、客観的な視点で判断することが大切です。判断が難しい土地は、司法書士や弁護士などの専門家に事前に相談することで、リスクを大きく減らせます。

④申請準備から決定まで時間がかかる

事前相談から完了までトータルで1年程度かかります。書類準備に数か月、申請後の審査・実地調査に半年から1年程度かかるためです。

すぐに土地を手放したい場合は、売却や寄付など別の方法と並行して検討するのが現実的です。本制度は「時間をかけてでも公的に手放したい人」向けの仕組みと考えるとよいでしょう。

相続土地国庫帰属制度と相続放棄の違い

「相続放棄でいいのでは?」と感じる人も多いはずです。両制度の本質的な違いを比較表で確認します。

比較項目国庫帰属制度相続放棄
対象範囲特定の土地のみ被相続人の全財産
申請期限期限なし相続を知ってから3か月以内
主な費用14,000円+負担金20万円〜収入印紙800円+専門家報酬
申請窓口法務局の本局家庭裁判所
他の財産への影響影響なし預貯金や自宅も相続できない

国庫帰属制度が向いているケース

受け取りたい財産があり、不要な土地だけ整理したい場合に適しています。すでに相続から長期間が経ち、3か月の相続放棄期限を過ぎているケースでも検討できる点も魅力です。

相続放棄のほうが適しているケース

借金が多く、ほかに引き継ぎたい財産がない場合は相続放棄のほうがシンプルです。費用も抑えられます。ただし期限は3か月と短いため、早めに弁護士や司法書士へ相談しましょう。

自分の土地が相続土地国庫帰属制度の対象になるかセルフ診断

制度の利用可否を、5つのYES/NO質問で大まかに判定できます。あくまで目安のため、最終判断は必ず法務局の事前相談で確認してください。

あなたの土地は何個YESがつきますか?

  • Q1.相続または遺贈で取得した土地ですか?
  • Q2.土地に建物が建っていないですか?
  • Q3.抵当権や賃借権などが設定されていないですか?
  • Q4.隣地との境界が明確で、所有権に争いがないですか?
  • Q5.崖や地下埋設物、放置工作物などはないですか?

YESの数を数えたら、下の判定表で結果を確認しましょう。YESが多いほど、本制度を利用できる可能性が高まります。

YESの数判定次のアクション
5個すべて申請できる可能性が高い法務局で具体的な準備を確認
3〜4個条件付きで申請可能事前準備の費用対効果を検討
2個以下申請は難しい可能性売却や寄付など別の選択肢へ

セルフ診断はあくまで簡易判定です。境界の状態や地下埋設物の有無など、現地を見ないと分からない要素も多いため、判断に迷うときは必ず管轄の法務局・地方法務局の本局で事前相談を受けてください。事前相談は無料で、2024年10月からはウェブ相談も利用できます。

相続土地国庫帰属制度が利用できない場合の選択肢

セルフ診断や事前相談で申請が難しいと分かった場合、土地を手放すための代わりの方法を検討します。主な4つの選択肢を見ていきましょう。

本制度が使えない場合の4つの選択肢

  1. 不動産会社や空き家バンクで売却する
  2. 自治体や隣地所有者、公益法人へ寄付する
  3. 相続放棄ですべての財産を手放す
  4. 山林組合や空き家管理サービスへ管理を委託する

それぞれ順番に解説していきます。

①不動産会社や空き家バンクで売却する

最もシンプルな方法は売却です。市街地や住宅需要のある地域では不動産会社経由、地方の戸建ては自治体の空き家バンク、農地は農地仲介サイトが主な候補になります。

買い手がつけば現金化できる点が大きなメリットです。ただし需要のない土地は数年経っても売れないケースもあります。価格を相場の半額以下に下げる、隣地所有者に直接交渉するなど、柔軟な工夫が必要になる場合もあります。

売却益が出た場合は譲渡所得税の対象となるため、税金面の試算もあわせて行いましょう。相続から3年10か月以内であれば、相続税の取得費加算の特例も活用できます。

②自治体や隣地所有者、公益法人へ寄付する

費用負担なく手放せる可能性がある選択肢です。ただし自治体は活用見込みのない土地の寄付を断るケースが多く、受け入れてもらえる土地は限られます。

実務でよく使われるのが、隣地所有者に持ちかける方法。隣地と統合することで土地の価値が上がるメリットを示せば、無償または低価格で引き取ってもらえる可能性があります。

注意したいのは贈与税の扱いです。個人から個人への土地の寄付は、受け取った側に贈与税がかかる場合があります。事前に税理士に相談し、税負担の有無を確認しておくとトラブルを防げます。

③相続放棄ですべての財産を手放す

負動産しかない、または借金のほうが大きい場合は相続放棄が有力です。家庭裁判所に申述するだけで、土地を含む全財産を手放せます。

注意したいのは、相続放棄をすると預貯金や自宅も受け取れなくなる点です。また期限は相続を知ってから3か月と短く、過ぎると単純承認とみなされてしまいます。

判断を迷っている場合は、期限の延長(熟慮期間の伸長)を家庭裁判所に申し立てる方法もあります。延長は1〜3か月程度認められることが多く、その間に他の財産の調査や本制度との比較検討を進められます。

④山林組合や空き家管理サービスへ管理を委託する

手放さず保有を続ける場合に有効な選択肢です。山林組合や空き家管理サービスに管理を委託すれば、月数千円から当面の管理負担を軽減できます。

将来的に売却や本制度の利用に切り替える前提で、つなぎとして使うのもおすすめ。委託期間中に境界を確定させたり、必要な書類を集めたりしておけば、後の手続きがスムーズに進みます。

固定資産税の負担は続きますが、近隣トラブルや管理不全を防げる点が大きなメリットです。とくに遠方の土地を相続した人にとって、現実的な選択肢になります。

相続土地国庫帰属制度を相談できる専門家の選び方

申請書類の作成や境界の確定など、自分で対応が難しい場合は専門家に依頼できます。本制度の申請書類作成は、司法書士・弁護士・行政書士が法令上代理または代行可能です。境界確定の測量は土地家屋調査士が担います。

ケース別の相談先

  • 申請書類の作成を任せたい → 司法書士・行政書士
  • 相続争いや権利関係の整理が必要 → 弁護士
  • 境界が不明確で測量が必要 → 土地家屋調査士
  • 相続税の試算もまとめて相談したい → 税理士

申請書類の作成代行は10万円台後半〜数十万円が目安です。境界確定の測量は土地の面積や形状にもよりますが、数十万円規模になることが少なくありません。初回相談を無料で行う事務所も多いため、複数に問い合わせて見積もりを比較すると安心です。

相続土地国庫帰属制度に関するよくある質問

申請が却下された場合、審査手数料は返ってきますか?

原則として返還されません。却下・不承認のほか、申請者自らが取り下げた場合も同様です。事前相談で見込みを確認してから申請するのが安全です。

共有名義の土地は単独で申請できますか?

共有者全員の同意による共同申請が必要です。一人でも反対者がいる場合は申請できません。共有者に相続人以外が含まれていても、相続人がいれば全員での共同申請は可能です。

申請中に土地を売却や贈与することはできますか?

申請中に所有権を譲渡すると、申請主体が変わるため申請は取り下げる必要があります。売却や贈与の予定がある場合は、申請前か申請後かを慎重に判断してください。

申請窓口は不動産所在地ですか、住所地ですか?

申請する土地が所在する地域を管轄する法務局・地方法務局の本局です。申請者の住所地ではなく、土地の所在地が基準となる点に注意してください。

WEBで事前相談の予約はできますか?

2024年10月からウェブ相談が運用されています。法務省・法務局の公式サイトから予約フォームにアクセスできます。遠方の法務局へ通えない場合に便利です。

法人や外国人でも申請できますか?

法人は申請主体になれません。外国人については、相続または遺贈で日本の土地を取得した個人であれば申請可能です。日本国籍は必須ではありません。

相続土地国庫帰属制度とは?制度の詳細を解説:まとめ

今回は相続土地国庫帰属制度について紹介していきました。

  • 2023年4月施行の新しい制度
  • 相続や遺贈で取得した個人が対象
  • 却下5類型と不承認5類型に注意
  • 費用は14,000円+負担金20万円〜
  • 申請から完了まで1年程度かかる
  • 相続放棄と違い特定の土地のみ手放せる
  • 判断に迷うときは法務局へ事前相談

不要な土地を抱えたままだと、毎年の固定資産税や管理コストが積み重なり、次の世代にも負担が引き継がれます。本制度を含めた選択肢を早めに比較検討することが、相続後の土地問題を解消する第一歩です。

制度の詳細や最新情報は、法務省の公式ページで随時更新されています。申請を具体的に検討する場合は、必ず公式情報と事前相談で最新の運用を確認してください。

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